この記事では、保税倉庫の特徴や利用するための手続きの流れを解説しています。
また、自社倉庫を保税倉庫にするための手続きの流れや注意事項も紹介していますので、気になる見出しをクリックして情報収集されてください。
目次
保税倉庫とは?
保税倉庫とは、外国から到着した貨物を一時的に保管しておくことができる場所のことです。
保税蔵置場や保税地域とも言われます。この保税倉庫に保管されている状態であれば、関税や消費税を納税することなく保管しておくことができます。
保税地域には、保税展示場、総合保税地域、指定保税地域、保税工場もあります。
特殊な状態や大型貨物の場合、既定の保税倉庫に保管することができないケースがあります。その際には、税関から許可された場所を一時的な保税地域として使用します。これを「指定保税地域」と言います。
また、関税等を支払っていない外国貨物の状態のまま一時的に国内に入れ、展示会等に利用することができます。この場所を「保税展示場」と言います。例えば、東京モーターショーで展示されているスーパーカーは海外から持ち込まれていますが、一時的に関税等の支払いを猶予されている状態で、展示会が終了次第、発送元の国へ返送されます。
一般的な商業貨物についても保税倉庫に保管していれば、関税等の納税をする必要はありませんが、保税倉庫から国内に貨物を流通させるためには、輸入申告を行い、関税や消費税、酒税など必要な税金を国に納めたあとに、国内に引き取る必要があります。
関税等の税金が支払われていない貨物については、「外国貨物」と言って、勝手に持ちだしたり、開封することさえ許されません。
「外国貨物」とは、外国から日本に到着した貨物、輸出の許可を受けた貨物の事を言います。外国貨物は外国から到着した貨物だけでなく、国内にあった貨物で輸出の許可を受けた貨物も含まれます。つまり、一度輸出の許可を受けた貨物は、勝手に開封したり持ち出しすることは禁止されています。
対して「内国貨物」とは、外国から到着した貨物で、各省庁から他法令の許可承認、税関から輸入の許可を受けた貨物のことを言います。又、元々国内にあった貨物も内国貨物と言います。これら輸入の許可承認を受け「内国貨物」になることで、国内に流通させることができます。
保税倉庫のメリット
保税倉庫をこれから利用する企業様にとって、そのメリットとデメリットは気になるところですよね。
実は保税倉庫にこれといったデメリットはありません。あえて申し上げますと、輸入(納税)申告をせず、長期保管するためには税関から承認を受ける必要があります。
納税前の貨物については、3ヶ月間まで保税倉庫に貨物を保管しておくことができます。この期間を越えてしまうと収容の対象となってしまうため、事前に「蔵入承認申請」を税関に行い承認を受ける必要があります。メリットについては4つありますので1つ1つご紹介して参ります。
リードタイム,輸送コスト効率化
保税倉庫では、輸入(納税)申告から流通させるための工程をすべて行うことができます。
輸入通関をしたら、保税倉庫からすぐに出荷してください!ということはなく、必要な荷捌きや梱包等を行い、出荷するとろまでの工程を1つの場所で行うことができます。
これにより、余計な貨物の移動やそれに付随するコストも削減できるため高率的な物流が可能になっているんですね。
貨物を安全に保管できる
保税倉庫に貨物を保管している間は、税関の管轄下の貨物になります。
法律によって守られた貨物であるということと、保税倉庫のセキュリティーも徹底されていますので安心して保管しておくことができます。
経費を抑える
保税倉庫に貨物が保管されている状態であれば、関税や消費税などの税金の支払いを保留にすることができます。国内で流通させる必要が出たときに輸入すれば良いので、先に税金を支払う必要もなく、経費負担を抑えることができるんですね。
仮に、到着した貨物が不良品であった場合や、法改正で日本に輸入することができなくなってしまった場合でも、税金を支払うことなく、海外に返送することも可能です。
さらに、保税倉庫内で商品が壊れてしまい商品価値が無くなってしまったものについては、関税等は支払うことなく、廃棄処分することもできます。
外国貨物のまま流通等が可能
保税倉庫内で保管されている外国貨物は勝手に開封したりすることはできませんが、税関に申請して承認を得ることで、仕分け、点検、改装、値付け等の流通加工をすることができます。
また、税関から許可を得ることで外国貨物のまま展示会への利用、簡単な加工等も行うことができます。
さらに、外国貨物のまま転売することも可能ですので、貨物を柔軟に取り扱うことができますね。
保税倉庫を利用する手続き
保税倉庫を利用する手続きや搬出までの流れについてご紹介いたします。
外国貨物の搬入
外国から貨物が到着すると、コンテナヤードなど荷捌き場に貨物が下ろされますが、その前に「外国貨物仮陸揚の届出」が行われます。
陸に下ろされた貨物は、順次保税蔵置場に搬入されていきます。
他法令に関する検査
外国から到着した貨物は、搬入後すぐに輸入申告をすることはできません。「税金払えば良いのでは?」と思ってしまいますが、
海外からきた貨物を日本に入れるためには、「他法令」と言われる法律に抵触しないか確認を受ける必要があるんですね。食品衛生法や植物防疫法など、様々な国内の法律をクリアしてから輸入申告に進みます。
輸入(納税)申告
貨物が保税地域に搬入され、他法令の許可承認が下りると、いよいよ輸入(納税)申告に進みます。
税関に対し、INVOICE(仕入書)、Packing list(梱包明細書)、他法令の許可承認書、Arrival Notice(貨物到着通知)など、必要書類を揃えて輸入申告を行います。
申告をすると、管轄税関の担当者が書類審査を行います。その際、書類だけで貨物の内容が把握出来ない場合、X線検査や開被検査を行います。食品の場合は、成分チェックのためサンプリング採取されることもあります。
開被は基本的に、輸入申告をした通関士が立会い、商品の説明を行います。
輸入許可、搬出
税関の書類審査、必要に応じて貨物検査が終ると、関税等の税金の支払いが行われ、輸入許可となります。
この時点で、「外国貨物」から「内国貨物」になり国内に貨物を引き取れるようになります。
順次、トレーラー等の手配を行い、届け先に向けて貨物が搬出されていきます。
保税倉庫の保管料はいくら?
保税倉庫を一時的に借りる場合、その保管料はいくらになるのでしょうか。ここでは、保税倉庫を借りる際の、契約種類や保管料について解説していきます。
賃貸借契約と寄託契約
保税倉庫を借りる際、倉庫業者と交わす契約には2種類あります。
1つ目は、「賃貸借契約」です。この契約は、倉庫内の一部のスペースを借りる契約になります。貨物の荷捌き等の作業は倉庫側で行ってくれませんのでご自身で行う必要があります。
2つ目は、「寄託(きたく)契約」です。この契約は、スペースを借りることに加え、入出庫の作業や在庫管理まで、貨物の管理をトータルサポートしてくれます。
また、保管料にももちろん差が出てきます。「賃貸借契約」では「スペース」に対して、「寄託契約」では「保管している貨物の物量やサイズ」によって保管量が変動します。
保管料算出の要素
料金が決まる要素には、主なものとして下記の5つがあります。
1、容積による保管料
商品を詰めた貨物の大きさ(容積)を対象にした保管料です。貨物の縦、横、高さを計測し、容積(立方メートル:㎥)に対して課金します。
2、個数による保管料
貨物の大きさが同じときに使われる保管料です。1個いくらとして、総数を計算します。
3、重さによる保管料
貨物の大きさによらず、重量で算出します。キロ数やトン数で算出します。
4、坪数による保管料
貨物の大きさがそろっていなかったり、梱包されていなかったりする貨物の場合、貨物を平面に並べたときの坪数(面積)によって算出します。
5,パレットによる保管料
貨物が載ったパレット(移送や保管のために使用する荷役台)の台数によって算出します。
保管料の計算の仕方(例)
保管料の形態は様々で、課金される単位も変わってきますので、まずは自社の商品がどの保管形態に合っているのかを決めましょう。
ここでは、個数による保管形態の保管料計算例をご紹介します。
倉庫を寄託契約する場合の保管料算出期間として、1ヶ月単位や、1ヶ月を3期に分割する「三期制」、冷凍や冷蔵では1ヶ月を2期に分割する「二期制」などが主な算出期間になります。
三期制(第1期:1日~10日、第2期:11日~20日、第3期:21日~月末)の場合、「個数による保管料」を計算すると下記のようになります。
※1期当たりの保管料は以下の計算式で求めます。
例えば、1個あたり150円の保管料がかかるとします。第1期で在庫が100個あり、第2期で追加で20個の入庫があったとすると、合計120個の保管で、保管料は150円×120個=18,000円となります。
基本的に保管数(前期末在庫数+今期入庫数)×保管単価の計算となります。
この他に、貨物の荷役料が発生します。荷役料の計算方法は業者によって事なりますが、一般的に「積み下ろし回数×積み下ろし単価」で計算します。
例えば、積み下ろし回数(入庫5回+出庫8回=合計13回)×積み下ろし単価100円だと、1,300円の荷役料が発生します。荷役料については、物量や交渉次第で変わってきますので、取引業者に相談してみましょう。
保税倉庫を運営するための申請
自社の倉庫を保税倉庫にしたいと考える企業様も多いことでしょう。自社の倉庫が保税倉庫になれば、外国貨物の取扱いが可能になり、輸出入通関も自社の倉庫内でできますので、リードタイムと物流コストを大幅に削減することができます。
ここでは、自社の倉庫を保税倉庫として認めてもらうための条件についてご紹介します。
保税蔵置場の許可申請の流れ
自社の倉庫を保税倉庫として許可してもらうには「保税蔵置場許可申請書」を記載して税関に提出しますが、大まかな流れは以下3STEPになります。
申請予定の申出・相談
保税蔵置場等の新規許可を受けたい場合は、あらかじめ、申請予定地の所在地を管轄している税関官署の保税担当部⾨へ相談します。
税関との相談・ヒアリング
新規許可を受けたい内容に関するヒアリングが行われます。施設設備、役員・従業員の関税法令の理解度、貨物管理能⼒等について聞かれ運営知識と体制があるか確認されます。
許可申請書類の提出
ヒアリングが済み、問題がなければ申請予定地の所在地を管轄している税関官署の保税担当部⾨へ、新規許可申請関係書類を提出します。
具体的な申請手続きについては、まず税関官署に出向き相談されてください。
保税蔵置場等の主な許可要件
保税倉庫として許可されるには、倉庫であれば何でも良いというわけではありません。以下4つの条件がありますので、税関に出向く前に確認しておくと話が早く進むでしょう。
1)⼈的要件
・ 保税蔵置場の業務遂⾏に⼗分な能⼒を有していること(法令等の知識、記帳能⼒、保管業務に関する能⼒等)
・ ⼀定期間法令違反で処分を受けていないこと(関税法第43条) 等
2)場所的要件
・ 管轄税関官署から遠い場所でないこと
(原則25㎞以内、交通施設が整備されている場合はおおむね100㎞以内)
3)施設的要件
貨物の適正な保全ができる施設であること(フェンスの設置、施錠等)
4)量的要件
・ ⼀定量以上の貨物の取扱⾒込みがあること
許可にあたっての注意事項
保税蔵置場の運営を行うには、毎月税関に手数料を支払う必要があったり、万が一外国貨物を亡失した場合には、その貨物にかかる関税等の税金を支払う責任が発生します。保税倉庫を運営するリスクについても確認しておきましょう。
・ 被許可者は、保税蔵置場の種類や⾯積に応じ、毎⽉、税関に⼀定額の⼿数料の納付が必要。
(例︓500㎡未満は9,500円、500㎡〜1,000㎡未満は12,200円)
2)亡失した場合の関税納付義務
・ 保税蔵置場にある外国貨物が亡失した際は、保税蔵置場の被許可者が関税納付義務を負う。
3)記帳義務
・ 被許可者は、⾃⼰の責任により外国貨物を管理し、帳簿を設けて所要の事項を記載。
4)貨物の取扱い
・ 保税蔵置場の貨物は、1.内容の点検、改装、仕分け等、2.⾒本の展⽰、簡単な加⼯等が可能。
(2は税関⻑の許可が必要)
保税倉庫搬入から自宅に荷物が届くまで
保税倉庫について、個人の方が「保税倉庫に搬入されてから自宅に届くまで何日くらい?」という検索ニーズも確認致しましたので簡単に解説していきたいと思います。
配送状況を確認すると「保税倉庫へ搬入」と表示されたまま動きがないケースが多いようです。
まず「保税倉庫へ搬入」と記載されている場合、すでに荷物が日本に届いており、簡易通関をかける倉庫まで搬入されたということになります。
混雑状況にもよりますが、基本的に「保税倉庫へ搬入」と表示去れた日から1~3日程で通関手続きは終了し、配送先へ発送されます。
3日を経過しても自宅に届かない場合、倉庫が混雑しており通関待ちとなっているか、他法令の確認が長引いているなどの原因が考えられます。
問合せをして手続きを早めてもらうことは出来ませんので首を長くして楽しみに待ちましょう。