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貿易取引における支払い方法と支払い時期の注意点

この記事では、貿易取引における「支払い条件」「支払い時期」の注意点についてご紹介します。

お金に関する契約項目になりますので、トラブルを避けるため、リスクをしっかり把握し、備えることが大切です。

支払い条件は、決済方法と支払い時期の2つで特定する

商品代金の支払条件は、貿易取引交渉のなかで必ず確定しておかなければならない内容です。

支払条件は、決済方法と支払時期の2つの要素を組み合わせて決定します。主な決済方法は「送金決済」と「荷為替手形決済」の2つです。

まず、決済方法については、細かく分けるといろいろとあるのですが、代表的な方法を大きく分類すると、「送金決済(Remittance)」「荷為替手形」を利用した決済の2つの方法に大別することができます。

商品の代金を、買い手が直接売り手に送金するのが「送金決済」。この場合、代金の受け取りや支払いを、日本の銀行と外国の銀行との間で、銀行振込による方法で行うものと理解しましょう。

これに対して、商品引取に必要なさまざまな書類(船積書類)と、銀行経由で振り出す方式の請求書である為替手形を組み合わせた荷為替手形を利用し、代金の受取や支払いを行うのが「荷為替手形」を利用した決済となります。

このケースでは、輸出者が荷為替手形を輸出者側銀行に持ち込むことで代金が回収されることになりますが、「送金決済」の場合はこうした書類を銀行に持ち込む必要はありません。

送金決済

送金決済のうち、もっとも頻繁に使われるのは電信送金 (Telegraphic Transfer:T/T)です。これは、国内取引における銀行口座振込と同様の決済方法と考えて差し支えありません。

普通送金 (Mail Transfer:M/T) も同じく口座振込ですが、銀行間の連絡を郵便で行うので非常に時間がかかります(通常2週間程度)。そのため、現在ではほとんど利用されていません。

また、送金小切手 (Demand Draft:D/D)は文字どおり小切手を発送する方法ですが、郵送途中の事故や紛失などの危険があるの で、少額取引以外では用いられません。

郵便為替(Postal Money Order)は銀行ではなく郵便局を経由して送金する方法ですが、貿易取引ではあまり利用されません。

荷為替手形を利用した決済

荷為替手形を利用した決済は、信用状のある・なしによってさらに2つのタイプに分けられます。

ちなみに信用状(Letter of Credit: L/C)とは、輸入者側の銀行が、輸出代金の支払いを輸出者に対して保証する支払保証状のことです。

信用状取引

まず、信用状(L/C)に基づいて荷為替手形を作成し、決済を行う取引を信用状取引と言い、万一、輸入者が代金を支払えないときにも、銀行が代わりに代金を支払ってくれる点が特徴です。

「輸出者にとっては、代金回収リスクを低くすることができる安心な決済方法であり、輸入者にとっても、輸出者による確実な商品の船積みを期待できる手法です。
B to B(企業対企業)の貿易取引では、もっとも頻繁に利用される決済方法の1つでしょう。

信用状のない荷為替手形決済

これに対して、信用状のない荷為替手形決済では、支払書類渡し(D/P)と呼ばれる方法と、引受書類渡し(D/A)と呼ばれる方法があります。

単純化して説明すると、支払書類渡し(D/P)は、輸出者による船積み後、輸出者の作成した船積書類と為替手形(荷為替手形)が輸入者側銀行から輸入者に手渡される際、輸入者が商品代金を支払うという方法です。

一方の引受書類渡し(D/A)は、上記の支払書類渡し(D/P)とは異なり、輸入者は輸入者側銀行から荷為替手形を受領する段階では現実の支払いを必要とせず、契約で定められた期日が経過した時点での代金支払いを約束する(これを「引き受け」と言います)だけでよい方法です。

つまり、手形の満期日までは支払いを猶予されることになります。

どちらの方法も、銀行による支払保証状である信用状がありませんし、買い手が手形を決済するまでは売り手は代金回収ができません。そのため、輸出する側にとってはかなり不利な決済方法となります。

特に引受書類渡し(D/A)の場合は、極端に言えば、書いては将来期日での支払いを約束する(=荷為替手形を引き受ける)だけで商品を手にすることができるのですから、買い手側にとっては非常に有利な決済方法だと言えます。

支払時期によって、どちらが有利かが大きく変わる

取引交渉における支払条件は、上述した決済方法に、支払時期を組み合わせることによって細かく確定させます。

商品の売買では、一般的に次のような代金の支払時期が考えられ ます。

A)前払い(Advanced Payment)
B)同時払い (Cash on Shipment / Cash on Delivery)
C)後払い (Deferred Payment)

このうち、Bの同時払いは、貿易取引では輸出者・輸入者双方がお互い遠く離れた場所にいますから、あまり用いられません。そこで、前払いにするのか、後払いにするのかを交渉で確定させます。

なおこのとき、貿易取引での「前払い」や「後払い」の基準となるのは、売り手から買い手への商品引渡し時点に限らず、本船への貨物の船積み時点であることも多い点に注意しましょう。

送金決済の場合

送金決済の場合には、前払い送金(T/T remitance in advance)とするのか、後払い送金(T/T remitance at XX days after shipment)とするのかで、輸出者と輸入者のどちらが有利となるのかが大きく変わります。

代金を前払いとすれば、輸出側にとっては代金回収リスクがなくなり非常に有利になりますが、逆に輸入側にとっては商品未着リスクが増えて大変不利になります。

逆に後払いとすれば、輸出側は代金回収リスクが大きくなって非常にに不利になり、輸入側は商品未着リスクがなくなり大変有利になります。

このように、送金決済の際には、支払時期の設定が非常に大きな意味を持ちます。

荷為替手形を利用した決済の場合

一方の荷為替手形を利用した決済では、送金決済と異なり信用状、D/P、D/A いずれの方法でも後払いとなります。

ただし、荷為替手形による決済は手形取引ですから、正確な支払時期はそれぞれの手形に設定された支払期日に拘束されます。

手形には、呈示されたときにその場で支払う「一覧払い」と、呈示されてから一定期日あとに支払う「期限付き払い」があり、手形に表示された“At Sight”という2文字の間にある空欄をハイフン(あるいは点線)で結べば一覧払いの手形になり、at XX days after sight と日数を入れれば、「呈示されてからXX日後を支払日として支払う」という意味の期限付き払いの手形になります。

なお、Eメールや船積書類等での略表記も、それぞれ「L/C at sight」とか「L/C at XX days after sight」などとなります。

一般論で言うと、取引の初期には商品を持っている輸出側が強いので先払いとなりやすく、取引を重ねて輸入側の信用が付いてくると、次第に支払時期が後ろに伸びていく傾向があります。

それぞれの支払い方法での輸出者側・輸入者側双方にとっての有利さの度合いは、以下のようになっています。

(売掛金と買掛金の相殺取引の場合もある)

このほか、特に自社の海外子会社や関係の深い取引先との貿易取引では、それぞれの売掛金と買掛金を相殺することで決済をする場合もあります。

この方法による決済のことは、「相殺 (Write-off)」とか「交互計算(Open Account)」、あるいは「ネッティング (Netting)」などと呼び、すでに信頼関係のある取引先との決済で利用されます。

船積み条件を指定して納期を確定する

納期を確定するためには、船積みの場所と期限を指定しつつ、輸出者としては、万が一遅延した際の免責を設定することが重要です。

船積みの場所と期限を指定する

貿易取引では、売買契約を交わした商品を輸出国から輸入国へ国際輸送する必要があります。

その際、輸出地に停泊している船舶や航空機等の輸送機関に、輸出商品を積み込むこと、および、その輸送機関が荷積みを終えて目的地に向けて出発することを「船積み(Shipment)」と呼びます。

航空輸送の場合でも、英語ではShipment(または Shipment by Air)と言いますから気を付けてください。

さて、取引交渉ではこの船積みの時期、および船積みを行う場所も特定しなければなりません。貿易取引では、船積期限を指定する ことが納期の管理上重要ですから、国際輸送の流れやおおよその所要時間を把握して、双方にとって問題の起こらない船積期限を取り決めることが大切です。

また、船積みを行う場所については、通常は輸出港の名前、あるいは輸出国の空港の名前で指定します。輸出港については、貿易取引が行える国際港であることも必要です。

船積みの遅れに対する免責の方法

船積時期に関しては、さまざまな理由で船舶や航空機の積荷スペースが不足し、予定していた貨物を積むことができなかったり、一部貨物の積み残しが生じたりするなど、輸出者以外の責任で船積み自体が遅れることがあります。

こうした遅れが出た場合、売買契約の取り決め方によっては、輸出者が契約の不履行責任を負わされることがあります。
次のような条文を契約文書に加えることで、輸出者自身に責任のない船積みの遅れに対して、輸出者は免責されることができます。

“Shipment shall be done by the end of July, 20XX, but subject to the vessel space availability.”

「積替え」や「分割船積」にも注意

船積みが予定どおりに行われることになっても、それだけではまだ安心はできません。運送中に積替え(Transshipment)が行われる場合は、直行便よりも時間がかかり、商品の到着が遅れることがあるからです。

輸出港を出港した船舶が、途中の中継港でいったん貨物を荷卸しし、その後、別の船舶が配船されるのを待ってから中継港で再度貨物を荷積みし、最終目的港に向かう運送方法を「積替え」と呼びます。

この場合、輸入者側で納期の遅れなどのトラブルとなることが多いのですが、貿易条件によっては輸出者がそうした事態に責任を持たないこともあります。

たとえば、CFR条件やCIF条件では、輸出者が安価な船賃を期待して盟外船などの積替えの会社を選ぶことがありますから、事前の交渉段階で積替えがないか、確認することが必要になります。

輸出する側にとっても、貿易条件次第では遅れに対する責任を取らなければならなくなりますから、積替えの有無を事前に確認しなければならない点は変わりません。

なお、船積みを複数回に分けて行う分割船積(Partial Shipment)が行われることもあり、これも遅れの原因になることがあります。
この点についても、許容するのかしないのか、交渉の段階で事前に確認しておきましょう。

最後に

貿易取引は、国境を越えた商取引です。相手の顔や会社の状況なども目で見えないため、取引条件を明確に決めることが大切です。

初回の取引はお互い信用がないため、信用状決済を利用することで双方が安心して取引することができるでしょう。信頼が構築されてくれば送金決済でスムーズに取引ができるようになります。

売主買主、双方が安心して取引できる契約を結ぶよう慎重に契約内容を決めていくことが大切です。