この記事では、貿易取引をする前に、必ず行わなければいけない市場調査、取引相手を探す、信用調査の3項目について分かりやすく解説していきます。
貿易取引は、参入市場を間違えたり、不誠実な企業と取引を行うと大きな損害を被る可能性があります。
成功する貿易取引をするために、ぜひ最後まで目を通して行ってくださいね。
目次
輸出入取引をする前に市場調査を行う
輸出でも輸入でも、貿易取引を行おうとする際に最初に着手する業務は、自社の輸出ターゲットあるいは輸入元となる海外市場について詳しく調べる市場調査です。
まずは、 その方法から解説しましょう。
調査対象となる情報には2タイプあります。
1.一般事項
2.特定事項
一般事項とは、ターゲットとする国や地域に関する政治・経済・地理・文化・法制度・物流インフラ・通信インフラなどの総合的な情報です。
こうした一般事項の情報は、ジェトロや各国の在日外国総領事館、さらには日本の外務省や各国の政府機関が開設するウェブサイトなどで、比較的簡単に入手することができます。
これに対する特定事項とは、自社が海外取引を実際に行うことを目的として、特定の商品や品種、価格などに関して具体的に調べた情報のことです。
例えば、想定消費者数とか平均市場単価、競合製品や競合他社の情報、予想需要、市場ごとの特性などが挙げられます。
こうした特定事項の情報は、公的な情報源からだけでは十分な調査を行うことができません。
そこで、海外に自社の現地法人や関係取引先、あるいは代理店(Agent)や販売店(Distributor)などがあれば、これらの現地企業を通じて情報の収集を行うことが一般的です。
また、自社社員を海外出張させ、直接現地の情勢を調べさせるという方法もよく採用されます。
むしろ中小企業であれば、現地法人などを開設しているケースは少ないでしょうから、経営者自身が現地に出向き、直接市場の状況を把握することのほうが多いかもしれません。
経営者や自社社員を現地に直接派遣する際には、現地の商業会議所から取引先候補となる企業の紹介を受けたり、国際的な見本市等の機会を利用したり、ジェトロの国内事務所の情報デスクや海外事務所のアポイントメント・サービスを利用したりすると、スムーズな市場調査を実施できます。
輸出でも輸入でも、上記2つの情報のタイプを意識して市場調査を行い、想定している取引が商売として成り立つかどうか、厳密に判断することが貿易取引の第1歩となります。
輸出と輸入の場合の調査項目の違い
市場調査の方法自体は輸出でも輸入でもそう変わりませんが、収集すべき情報の性質とその収集目的は、輸出と輸入でそれぞれまったく異なります。
輸出の場合には、主に輸出先国の市場において、自社の商品がどのように受け容れられるか、現地での自社商品の適性を見ます。
現地の競合商品に打ち勝てるだけの価格や技術力など、具体的な国際競争力の有無や、潜在需要を予測することが市場調査の主要な目的となるわけです。
収集する情報も、そうした判断に必要な海外現地の競合商品・競合他社に関する情報や、消費者の志向や動向などに関する情報が中心となります。
これに対して輸入の場合には、輸入しようとする商品の日本市場での適性を重点的に見ます。
日本市場は、世界でももっとも品質・納期等に厳しい市場として有名で、この厳しい市場で成功した商品やビジネスは、世界の市場でも大きな苦労なく成功できるとさえ言われます。
競合商品に打ち勝つ競争力の調査ももちろん必要ですが、それ以上に、日本の消費者の高い要求基準をクリアする商品を安定的に供給できるか、また、消費者保護の意識が高い日本の法規制をクリアできるかなど、輸入商品の品質や納期、法規制等についての項目を重点的にチェックすることが主要な目的となります。
収集する情報も、日本での法規制と海外現地での法規制の違い、納期の達成状況、商品品質の客観的データなどが中心となってきます。
ビジネスパートナーを探す方法を知る
市場調査と並行して、輸出相手先あるいは輸入相手先となるビジ ネス・パートナーを探す必要もあります。ここでは、基本的な方法をいくつか紹介しましょう。
日本貿易振興機構(ジェトロ)を利用する
独立行政法人日本貿易振興機構、略称:ジェトロ(Japan External Trade Organization:JETRO)は、日本政府が国際ビジネス推進のために設置した公的機関です。
全世界をカバーしており、貿易取引を行おうとする日本企業にとっては、なにより頼れる存在と言えるでしょう。
現在は世界トップとなった日本の各家電メーカーも、昔はここで貿易を学び、世界に飛躍していったと言われています。
国内約50ヵ所に事務所や情報デスクがあり、輸出・輸入・投資等の国際取引情報が充実していて各自で情報を調べられるほか、貿易投資相談や海外展示会等への出店支援、海賊版被害に関する相談、有望な商品の輸出支援、さらには海外のネットワークを活用しての現地調査代行なども行っています。
また、海外約70ヵ国にも事務所があり、現地の一般事項のブリーフィングやさまざまな海外進出支援サービスを受けたり、現地企業とのアポイントメントを代理で取ってくれるアポイントメント・サー ビスなどを利用することができます。
これから貿易取引を行おうとする会社の経営者や担当者は、その存在をフルに活用すべきでしょう。
都道府県や政令指定都市の貿易振興機関を利用する
ジェトロは国が設置した機関ですが、同じように各都道府県や政令指定都市が、貿易取引を推進するための機関を設置している場合があります。
機関によって、特定の地域や分野に強かったり、独自のサービスを提供しているなどの強みを持っており、自社のニーズに合わせて利用を検討するといいでしょう。
例として、2つの機関を紹介しておきます。
1、財団法人大阪国際経済振興センター(通称:IBPC大阪)
大阪市の外郭団体で、中国・アジア・インドなどの各主要都市との連携があり、海外ビジネス推進に熱心な優良機関です。
2、財団法人大阪産業振興機構 国際経済支援事業部(通称:IBO)
大阪府の外郭団体に設置された、海外ビジネスのマッチングを推進する事業部です。産業界の国際化推進に熱心に取り組んでいます。
国内および海外の国際見本市等に参加する
国際見本市や国際展示会では、海外企業との出会いの場が提供され ます。特に、米国や欧州で行われる大規模な国際見本市は、単なる展示会ではなく商品の商談や技術的打ち合わせの場となっています。
即断即決で、その場で代理店契約や販売店契約を結ぶことも珍しくありません。
輸出であれば、こうした国際見本市等に出店企業として参加し、海外での購買者(Buyer)を探すことができます。
出店に際しては、ジェトロなどの公的機関に支援をしてもらうのもよいでしょう。
逆に輸入であれば、出店している企業を見て回り、魅力的な商品を生産している供給者(Supplier)を探すことができます。
有名な国際見本市や国際展示会には、開催日程に合わせて各旅行会社がパック・ツアーを用意していたり、前述したような各貿易推進機関が縦断ツアーを用意してくれたりします。
最初は、そうしたツアーを利用するのも便利でしょう。
国内および海外の商業会議所・商工会議所を利用する
商工会議所は、それぞれの地域内で商工業の総合的な発展を支援する組織です。こうした組織は全世界にあり、現地で訪ねれば、供給者や購買者となる企業を探す際にさまざまな支援をしてくれます。
また、日本国内の商工会議所でも、貿易取引が活発な地域の商工会議所では海外の商業会議所等と国際的な協力関係を結んでいることがあり、相談することで海外の商業会議所等を紹介してもらえる場合があります
在日の外国総領事館や外国貿易振興機関を利用する
日本にある外国の領事館では、商務官等を置いて日本企業との貿易取引の振興を図っています。
また、日本のジェトロのような外国の貿易振興機関が、日本国内に事務所を構えていることも少なくありません。
特に輸入取引の場合、こうした外国の政府組織は供給者の紹介に熱心です。輸入元となる国が決まっているのであれば、一度相談し てみることをお勧めします。
海外ビジネス・コンサルタントを利用する
貿易取引には専門知識が必要な場面が多いため、海外ビジネス専門のコンサルタントに取引のサポートをお願いするのも1つの方法でしょう。
この場合、それぞれのコンサルタントごとに得意とする地域や商品分野があり、それぞれの地域・分野での供給者や購買者の情報を調査・提供してもらえます。
なお、コンサルタントを使う場合は、業務の内容とコンサルタントへの報酬を事前にしっかり定めてから起用することも大切です。
海外のハロー・ページや企業ダイレクトリーで調べる
海外企業の住所や電話番号等、基本的な情報を調査するには、ハロー・ページや企業ダイレクトリーといった出版物を利用するのも便利です。
ただ、こうした情報出版物はどうしても総花的な記載になりますから、各企業の詳しい情報を知るにはあまり向きません。
インターネットの情報サイトで調べる
もちろん、インターネットを利用して貿易取引の相手先を探すこ ともできます。
最近ではB to Bのビジネスの仲介を行う国際的なサイトも多く、少額の取引からでも利用できるので、パソコンの操作に慣れている経営者にとっては敷居がもっとも低い方法かもしれません。
有名なサイトを、いくつか紹介しておきましょう。
・Alibaba.com
http://www.alibaba.com/
中国のメーカー情報・製品情報を扱うサイト
・EURO PAGES
http://www.europages.com/
欧州のメーカー情報を扱うサイト
・BigBook:YellowPages
http://www.bigbook.com/
米国の企業情報を扱うサイト
・ASEAN-JAPAN CENTER
http://www.asean.or.jp/ja
ASEAN各国のメーカー製品情報を扱う公的サイトなど
取引先候補が見つかったら信用調査を行う
ここからは取引企業の信用調査方法についてご紹介します。
貸倒れ等のトラブルとなると回収が難しい
外国での供給者や購買者が見つかったら、次は可能な限りその外国企業の信用調査を行います。
貿易取引で万一貸倒れなどがあると、自社は大きな損害を受けてしまいます。
取引ごとの利幅をそれほど大きく取っていない場合には、1度の貸倒れによる被害を回復するのに、長期間かかることも珍しく ありません。
また、貸倒債権等の回収も、国が違いますから困難がともないます。
特に継続的な取引を行うつもりなら、事前にしっかりと相手方の信用調査を行うべきでしょう。
3つのルートで得た情報を総合的に判断するとよい。
海外企業の信用調査には、主に以下の3つのルートを利用します。
1、国際的信用調査会社(Credit Agency)のルート
もっとも一般的かつ情報量の多い方法は、Credit Agencyと呼ばれる国際的な信用調査会社を利用する方法です。
貿易業界の信用調査会社としては、米国に本拠を置くDun & Bradstreet Corp.(通称:ダン社)が圧倒的なシェアと伝統、世界的な情報網を持っており、多くの企業がダン社を利用して海外企業の信用調査を行っています。
このほか、国内では帝国データバンクや東京商工リサーチ、ジェトロの国内事務所などでも信用調査を依頼できます。
これらの信用調査会社に依頼し、調査レポートを提出してもらうのが1つめのルートです。
2、銀行のルート
2つ目のルートは、その外国企業の取引銀行です。この取引銀行が提出する信用情報のことを、Bank Reference と呼びます。
対象となる外国企業の了解を得たうえで、取引銀行にアクセスして信用情報の提供を依頼します。
Bank Referenceでは、財務内容やキャッシュフローなど、外国企業の事業内容を知るのにふさわしい情報を入手できます。
3、各輸出入製品組合等のルート
貿易取引を行う日本企業が、商品別に組合を結成している場合があり、組合加盟企業に外国企業の倒産情報等を提供してくれることがあります。
こうした、輸出入製品組合等を通じた信用情報、Trade Referenceが3つめのルートとなります。
Trade Reference は、倒産や未払いなど、外国企業ごとの取引事故情報や、該当商品に関連する規制等の情報が中心となります。
外国企業の信用調査は、これら3つのルートで集めた情報を総合的に検討して行います。
ただし、これら3つのルートからの情報は、すべて間接情報にすぎません。鵜呑みにすることは避け、相手先企業の了解を得て実際に海外出張し、本社や支店、営業所、工場などを見学させてもらい、自分の目で実地調査することがベストなのは言うまでもありません。
信用調査の内容は「3つのC」でチェックする
では、実際に入手したCredit Agencyの調査レポートやBank Reference等は、どのように吟味すればよいのでしょうか。
通常は、次の「3つのC」で大まかな判断を下すことになります。
まず、該当外国企業のこれまでの支払い振りや契約の実行実績、経営者の人柄や言動、会社の経営理念、社風、業界での評価などを示す“誠実性(Character)”を見ます。
次に、企業の収益力や資金調達余力などの財務能力を示す“資本カ (Capital)”を見ます。そして、営業力・技術力・開発能力・物流能力など企業の総合的な実力を表す“企業力(Capacity)”を見ます。
これら3つのC(Character、Capital、Capacity)を合わせて「3C’s」と言いますが、この3C’sのすべてでよい評価ができる企業であれば、まさに優良な取引相手と言えるわけです。
ただし、実務では3C’sのすべてで評価できなくても、2つ、あるいは1つのCで評価できる企業であれば、見るべき所のある企業と言えるでしょう。
ちなみに、3C’sに政治・経済等のその国の一般事項を表す“国情 (Conditions)” を合わせ、4C’sとすることもあります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました!
貿易取引を成功させるには「情報力」が命です。ジェトロや関係機関のサポートをしっかり活用し、優良な取引企業を見つけてください。
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