航空機に搭載できる貨物のサイズ制限とULD(Unit Load Device)の種類を紹介します。航空機はスペースが限られているため、搭載できるサイズが明確に規定されています。
フォワーダーに依頼する前に、航空機に搭載できるかサイズ制限を確認しましょう。
目次
航空貨物のサイズ制限
航空貨物のサイズや重量制限についてご説明します。航空機といっても、機種や貨物専用機かどうかによって、搭載できる貨物の量、サイズ、重さにかなりばらつきがあります。
順を追って説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
航空機の機種
航空機には様々なサイズがありますが、大きく分けると、ワイドボティとナローボディの2つに分かれます。
ワイドボティ(Wide body)
機体の幅が広いため、より多くの貨物を積載することができます。背が高い貨物や幅が大きい貨物も運ぶことができます。
旅客機では通路が2本あり、座席が3つのブロックに分かれています。代表例は、通称「ジャンボジェット」と呼ばれるボーイング社のB747です。
主要な機種名は次のとおりです。
■ボーイング社:B747, B777, B787, B767
(B767は若干幅が狭いためセミワイドボディ機とも呼ばれる)
■エアバス社:A330, A340, A380
ナローボディ(Narrow body)
機体の幅が狭いため積載できる貨物の量や大きさが限られます。
旅客機では通路が中央に1本だけあり、座席が左右の2つのブロックに分かれています。
比較的乗客が少ない地方路線等に使用されます。
■ボーイング社:B737, B757
■エアバス社:A318, A319, A320, A321
旅客機と貨物専用機
旅客機(パッセンジャー, passenger)は、その名のとおり旅客を輸送するように作られた航空機です。私たちが乗客として利用するための、座席やトイレ等の設備が取り付けられています。
座席等の下の空間には貨物用のスペースもあります。そこには、乗客のスーツケース等の手荷物の他に、宅配便貨物、郵便物、その他の一般貨物も積載されています。
貨物専用機(フレイター, freighter)は、貨物だけを運ぶために作られた航空機です。旅客機の場合に座席がある空間にも貨物を積載することができます。
旅客機の貨物スペースには入らない、背の高い貨物や大型の貨物を運ぶことができます。
なお、機種名の後ろに”B747F”のように”F”がついていることがあります。この”F”は”Freighter”の頭文字で、貨物専用機であることを示します。
航空機内の貨物スペース
航空機内のスペースは大きく分けて2つに分かれます。
メインデッキ:機体の上半分の空間
ロワーデッキ:機体の下半分の空間
下記のとおりメインデッキの空間の方が高さあります。
・旅客機
メインデッキ:旅客用スペース・・・貨物は積載しない
ロワーデッキ:貨物用スペース・・・高さ約163cm(64インチ)
・貨物専用機
メインデッキ:貨物用スペース・・・高さ約300cm(118インチ)
ロワーデッキ:貨物用スペース・・・高さ約163cm(64インチ)
積載できる最大サイズの目安
ワイドボディの貨物機でも機種によって積載できる最大サイズは異なります。一例として、JALが運行しているB747-400Fという貨物機について説明します。
物理的に、航空機へのドアの入口を通る大きさでなければなりません。その一覧表が下記です。最大で高さ、幅とも300cm程度の貨物を積めることがわかります。
ただし、ULDの高さを考慮すると、実際の高さの上限は290cm程度です。幅についても、300cm程度を超えると積載できない可能性もあります。
大きな貨物の場合、航空機に搭載できるかどうかを早めに航空会社やフォワーダーに確認することをおすすめします。
機種ごとの積載量の目安
旅客機/貨物機、ワイドボディ/ナローボディごとの積載量の目安は下記のとおりです。
※ナローボディの貨物機はほとんどありません。
なお、上記の積載量(重量)はあくまで目安です。実際は、次のような条件によって積載可能量が減ることがあります。
・乗客数や手荷物の量
乗客が満席で手荷物も多い場合、その分貨物を積み込める量が減ります。逆に乗客が少なければ、比較的多くの貨物を積むことができます。
・重さのバランス
安全に飛行するために、貨物を航空機へ積み込むときは左右や前後の重量のバランスが釣り合うように積み込みます。
極端に重い貨物や、逆に軽くてかさばる貨物があると、バランスをとるために積載する貨物量を減らすことがあります。
・燃料との兼ね合い
航空機は機種ごとに最大離陸重量が決まっています。最大離陸重量(Maximum Takeoff Weight)とは、航空機の構造上、離陸することができる最大の重さのことです。
最大離陸重量は、「機体の重さ」、「貨物の重さ」、「乗客・乗務員の重さ」、「燃料」の各要素に分けることができます。いずれかの要素の重さが増えると、別の要素の重さを減らさなければ、離陸することができません。
例えば日本から中国へ飛行する場合と、ヨーロッパへ飛行する場合とを比べると、ヨーロッパまでの距離の方が長いため、より多くの燃料を必要とします。
より多くの燃料を積まなければならないため、その分貨物を積載できる重さが減ります。
また、天候が悪い時なども、着陸のやり直しが発生することを見越して燃料を多めに積むことがあります。この場合も、貨物の積載量が減ってしまいます。
ULD
航空機に貨物を搭載するときは、基本的には航空機専用のULD(Unit Load Device)と呼ばれる機材に載せます。
ULDを使用する目的は次の2つです。
1.限られた航空機内のスペースを最大限有効に使うため
ULDは貨物スペースにぴったり収まるように大きさや形が設計されている。
2.航空機への積み込みや取り降ろしを迅速に安全にするため
大きさや形状がばらばらの貨物をULDの中にまとめて入れることで、積み込みや取り卸の際の取扱いが容易になります。
ULDには多くのタイプがありますが、大きく分けるとコンテナとパレットに分かれます。素材はどちらもアルミニウムなどの軽い金属が使用されます。
コンテナは大きさや形の規格が数種類あります。海上コンテナのような立方体のものもありますが、航空機内の湾曲した部分に合わせたいびつな形のものもあります。
パレットは長方形の板で、その上にパレタイズ貨物、木箱等を積み上げて行き、最後にネットやシュリンクラップで固定します。
バルク・スペース
航空機内のスペースはメインデッキ(上部)とロワーデッキ(下部)に分かれると書きましたが、実はロワーデッキにはコンテナやパレットが入らない「小部屋」があります。
小部屋のことを「バルク・スペース」と呼びます。バルクとは「ばら積み」のことです。バルク・スペースとはカートン(段ボール箱)を人の手で積み込んでいくスペースのことです。
積めるカートンの数は航空機のタイプ等によって様々ですが、数十カートンから2百カートン程度です。
ナローボディの中でも小さめの航空機の場合、ULDを積むスペースがなく、バルクスペースしかないこともあります。
航空コンテナの規格
航空貨物用に利用されるコンテナの規格をいくつかご紹介します。
LD3(AKE)コンテナは非常によく使われるタイプのコンテナです。貨物専用機と旅客機の両方のロワーデッキに搭載することができます。
入口のサイズが幅140cm、高さ151cmです。120 x 120cmや120 x 80cm等のサイズのパレットが1つ入ります。ただし高さが150cm以下でなければなりませんので、カートンを高く積み上げてあるパレットは搭載することができません。
コンテナの下部が片方だけ斜めに切り取られた形をしています。これは、航空機内部が丸くて下の方の幅が狭いためです。
LD8コンテナ<DQF>
LD8は下部が左右とも斜めに切り取られた形です。
LD3よりも幅が広めで231cmです。2パレット程度を入れることができます。
こちらも高さが150cm以上あると積み込むことができません。
ボーイング社のB767,B777,B787のロワーデッキに適した大きさのULDです。
B767は通路が2本ありますが、若干機体の幅が狭いため、セミワイドボディと呼ばれます。
B747,B777,B787はロワーデッキにLD3コンテナを横に2つ並べて積載することができますが、B767は幅が狭く、横に2つ並べることができません。
そこで、B767のロワーデッキにはLD3の代わりにLD8を使用します。
88パレット(PAG,PAH)
厚さ3cmの金属製の板状のパレットです。パレットの外枠の奥行きが88インチ(213cm)のため、「88パレット」と呼ばれます。
ワイド・ボティの航空機用です。
この上に、パレタイズされた貨物、木箱等の貨物等が積まれます。背が低いパレタイズ貨物の場合、2段重ねにされることもあります。
また、大型機械の部品で長さが2mや3mの細長い木箱入りの貨物が時々ありますが、そのような貨物も積むことができます。
96パレット(PMC)
厚さ3cmの金属製の板状のパレットです。パレットの外枠の奥行きが96インチ(243cm)のため、「96パレット」と呼ばれます。
ワイド・ボティの航空機用です。
貨物機の場合、メインデッキに96パレットを横に2つ並べて積むことができます。
旅客機の場合、ロワーデッキに縦一列に積むことができます。
特殊パレット(重量物・オーバーサイズ貨物搭載用
88パレットや96パレットには積載できないような、重い貨物や大きな貨物用のパレットです。
長さが300cmを超えるときにはこのパレットを使うと積み込むことができます。
また、88パレット、96パレットは最大搭載重量が5,000kg(5t)程度ですが、重さの制限を超える場合にもこちらの16フィートコンテナを使います。
とても重い貨物としては、船舶用エンジンやタービン、航空機用エンジン、ロケット用部品などがあります。
コンテナ・パレットに積載できない貨物
上記のパレットやコンテナに積載できない貨物として次のような貨物があります。
・生きた動物(馬、パンダ、イルカ等)
専用のケージ(檻)や水槽に入れて輸送します。
・超大型機械
事前に航空会社と打ち合わせをして、特殊な梱包や積載方法をとります。大きさや重さによっては貨物機のチャーターが必要です。
1枚のパレットに載せきれない長い貨物(5m以上など)も、事前に航空会社との打ち合わせが必要です。
【貨物機のチャーターについて】
多くの場合、貨物を航空輸送するときは定期運航しているフライトのスペースを予約します。しかし、場合によっては貨物機を一機丸ごとチャーターして貨物を輸送することがあります。例えば次のようなケースです。
・競走馬(国際的な競馬のレースがあり、多くの馬を一度に運ぶとき)
・レーシングカー(同じく、F1レースなどの大会のとき)
・コンサートやスポーツイベントの機材(大量の機材があり、しかも遅延が許されないとき)
・ボージョレ・ヌーヴォー(解禁日の2~3週間前に、ワインだけを運ぶチャーター機が運行される)
・超大型機械(数十t以上あり、定期便でスペース確保が難しいとき)
・救援物資(地震等の災害時に大量の物資を運ぶとき)
・定期便が就航していない空港間で貨物を運ぶとき
パレタイズの高さに関する注意点
航空貨物では、「予定していた便に搭載できず、到着が数日遅れる」ということが度々起こります。
理由は様々ですが、貨物のサイズに関連する理由としては、次のような条件が重なった場合に起こることが多いです。
・高さが150cm以上あるため、旅客機のロワー・デッキに積むことができない。
・貨物機にしか載せられないが、貨物機は便数が少ない。
・ブッキングしていた便に搭載できないと、到着が数日遅れる。
例えば、関西空港と韓国・仁川の間の大韓航空(Korean Air)のフライトは、旅客便は1日2往復(週に12往復程度)ありますが、貨物便は週に3往復しかありません(2019年10月現在)。
具体的には貨物便は毎週水曜日、木曜日、土曜日のみ運行しています。もし土曜日の貨物便に予約されていた貨物が搭載されなかったら、翌週の水曜日まで搭載することができず、大幅な遅れが生じてしまいます。
カートンをパレタイズして出荷するときは、できるだけ高く積んだ方が積載効率はよくなります。ただ、旅客便に搭載できる上限である150cmを超えると、貨物便にしか搭載できなくなり、貨物が遅延するリスクが高くなるということに注意しましょう。
また、海外から日本へ貨物を輸入する際にも同様の注意が必要です。貨物便の便数が少ない都市からの輸入の場合、高さが150cmを超えるとフライトの選択肢が少なくなり、遅延が起こりやすくなります。
場合によっては、輸出者と梱包方法やサイズについての相談をしましょう。
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