この記事では、税関検査にまつわる実情をご紹介します。
- 税関検査は何のためにやるの?
- 費用はかかる?
- 種類はある?
- どれくらいの時間がかかるの?
輸出入者は、なかなか税関検査に立ち会ったりしませんから、実情が分かりにくいですよね。
税関でどんな検査が行われるのか?かかる時間や費用はどれくらいなのか?分かりやすくご紹介していきます。目次から気になる箇所をご欄下さい。
目次
税関検査の目的
税関検査の目的は、輸出と輸入で違います。基本的に、日本に入ってくる「輸入」の方が税関の審査は厳しくなる傾向にあります。何故なら、関税や国内法が絡んでくるからです。
輸税関検査の理由:輸出編
輸出は主に、輸出貿易管理令という法律で規制されています。これは、テロや戦争に転用される可能性のある物品は輸出しないでね、という法律です。
該当物品は非常に多く、レーダーや遠心分離機など様々な規制物品があります。
輸出の際の税関検査では、輸出しようとする物がこういった規制品でないか確認するために行われます。
税関検査の理由:輸入編
輸入においては、以下2つの目的で検査が行われます。
- 社会悪物品の確認(覚醒剤等、拳銃、偽ブランド品など)
- 関税の確認
国内に覚醒剤や拳銃などが入ってくれば危険なことは誰もが想像できる通り、税関は水際でこういった社会悪物品が入ってこないように慎重に審査・検査を行います。
又、関税が適正に申告納税されるか確認します。
関税は国内産業の保護のために徴収します。海外の安価な物が関税なしで輸入されれば、国内の物が売れにくくなり競争力を失います。
関税は、国内産業を守り、国内産の競争力を保つために徴収されるんですね。
税関検査になる審査結果
税関に輸入申告をすると、NACCS(輸出入・港湾情報処理システム)が自動で「区分判定」を行います。区分ごとの審査内容は以下の通りです。
区分1:即時許可 | 貨物をすぐに国内に引き取ることができます。 |
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区分2:書類審査 | 品目分類、関税率、関税額、申告内容に問題ないか書類を確認します。 |
区分3:税関検査 | 書類と輸入物品内容が一致しているか又、社会悪物品が入っていないか確認します。 |
税関から区分3です!と判定されれば、泣こうがわめこうが強制的に検査になります。土下座も通用しません。
税関検査が終了後、問題なければ国内引取できるという流れです。
税関検査の種類
税関検査には大きく3種類の検査方法があります。
【 見本検査 】
貨物の一部を取り出して税関に持ち込みます。数量の確認が必要ないもので、貨物の内容を確認したいだけの場合は見本検査になります。税関職員が目視でチェックして問題がなければ輸入許可になります。
【 一部指定検査 】
数量と貨物の内容を確認する必要がある場合に実施されます。例えば、カートン内の個数が書類に記載されている個数と同じか確認されます。
【 全量検査 】
貨物全てを確認します。コンテナ単位の貨物の場合には、大型X線検査でコンテナそのままX線にかけて、怪しい影が見えたら開披検査を行います。複数の荷主でコンテナに詰められている場合には、取り出してX線もしくは税関持ち込み検査を行います。
貨物の状態や、税関がどこまで確認したいのかによって検査の方法は変わってくるんですね。
税関検査の費用
税関検査において、「税関から徴収される検査費用」はありません。
検査時には、通関業者やフォワーダーが立会いをしますので、立会費用として、通関業者もしくはフォワーダーから3,000円〜3万円程度の税関検査料が発生するでしょう。
検査貨物が少量の場合には、数千円程度で済みますが、コンテナまるごと開披する場合には、人手と手間を要しますから、状況に見合った料金が発生します。
又、コンテナヤード等から貨物を税関や大型X線検査場まで輸送する必要がありますから、その輸送費もかかります。
1パレット程度なら1万円程度で、コンテナ1本なら3万円前後程の費用が発生します。
検査になると、結構な費用がかかるのでできれば避けたいものですね。汗
税関検査にかかる時間
税関検査にかかる時間は、検査場の空き状況とドレージ・トラック業者の都合により変わってきます。
大型X線検査の場合には、検査場に予約をする必要があります。
繁忙期の場合には検査確定日当日に検査予約を入れることはできませんので、翌日に回されることがほとんど。
又、コンテナヤードから検査場に貨物を運ぶために、ドレージやトラックを手配しますが、GW前などの繁忙期には全然車を確保できないときがあります。
そのため、通関士はドレージ会社等に四六時中電話をかけて、手配できるか確認を繰り返します。
うまくいけば、翌日の検査に車を確保できますが、あまりに混雑していると2日後、3日後の手配になることも。
税関検査になったら、貨物引取が最低でも2日、最長で5日程度延びると心がけておくと良いでしょう。
税関検査の流れ
税関検査の流れは以下の通りです。
- 税関から検査の連絡が入る
- ドレージ、トラックの確保を行う
- コンテナヤード、コンテナフレイトステーションに検査になった旨の連絡を入れて、当日貨物を搬出してもらえるように依頼する。
- 検査場の予約をする
- (検査当日)貨物を搬出して、検査場に持ち込み
- 大型X線もしくは目視検査で検査実施
- 問題なければその日に輸入許可が下りる(貨物引取)
工程を見てみるとすぐに終わりそうですが、先程紹介した通り、検査場の予約が入れられない、ドレージが確保できない場合には、手続きが止まってしまいますので、通関士はドレージ確保にてんやわんやしたり、荷主と納期調整を図ります。
税関検査になりやすいケース
税関検査になりやすいケースはずばり以下のような場合です。
- 輸出入実績がない荷主や貨物の場合
- 申告内容が疑わしい場合
- 違反物品の多い輸入元の場合
1つ1つ解説しましょう。
まず、今まで一度も輸出入したことがない場合は、ほぼ間違いなく区分3になり検査が実施されます。
法人として輸出入する場合には、「輸出入者符号」という固有の番号を発行します。この番号で輸出入の履歴を管理しています。
この輸出入者符号取りたての場合には、貿易初心者となりますから、税関はより厳しく審査・検査を行います。
輸出入の数をこなしてくれば、税関から信頼されて、区分1(即時許可)が出るようになります。
次に、申告内容が疑わしい場合です。例えば、輸入するものが「時計」なのに単価が2ドルなど異常な低価格であったりすると関税逃れと疑われて検査になる可能性が高まります。
その他にも、重量や輸出入者名など、様々な申告項目を確認され確認が必要であれば検査を実施します。
最後は、違反物品の多い輸入元の場合です。例えば、ある特定の国から輸入するブランド品が偽物ばかりだと、税関は目を光らせます。
偽物のブランド品は、関税法で輸入禁制品になっていますので、偽物と発覚すれば没収され廃棄されてしまいます。
輸出入実績は数をこなすしかありませんが、申告内容や貨物内容は、輸出入者や通関業者が注意すればスムーズな通関をすることができることもあります。
特に、輸入者においては、輸出者が誠実な企業かしっかり確認することが大切ですね。
個人用貨物の検査や免税範囲
旅行者においては、出国時・入国時に携帯品や別送品の申告をする必要があります。
「出国時」においては、100万円相当を超える物品や有価証券を持っている場合には、「外国製品の持出し届」を税関に必ず提出しておきましょう。
何故なら、帰国したときに、外国で買ってきたものと区別するためです。国内から持っていったものに関税が課せられてしまう可能性があるので注意しましょう。
「入国時」においては、「携帯品・別送品申告書」の提出が必須となります。入国時に携帯して持ち込まれる物、別送する物どちらも税関の検査を経て輸入を許可されます。
入国時においては、持ち込める数量に制限のある物があります。以下掲載しますのでご確認下さい。免税範囲を超えるものには関税がかかります。
酒類:1本760ml 3本まで
紙巻たばこ:200本まで
葉巻たばこ:50本まで
香水:2オンスまで
その他:20万円まで(外国市価のTOTAL金額)
最後に、輸出入できないものをご紹介します。
麻薬等の薬、児童ポルノ、特許権,著作権などを侵害するもの etc
【輸入できないもの】
輸出できないものに加えて、爆発物、拳銃、指定薬物などがあります。
違反物・危険物かも…と思ったら税関に都度確認することが大切です。
税関検査の事件事例
輸入時の税関検査において摘発された事件は、ほとんどが麻薬等の違法薬物です。
直近では、成田空港で令和1年12月9日に、覚醒剤3.9kgが押収されました。
摘発事例を確認されたい場合は、税関HPをご確認下さい。
・令和元年度 東京税関密輸出入取締対策協議会資料
https://www.customs.go.jp/tokyo/yun/2019_mittai.html
まとめ
税関検査は、どのような荷主、貨物でも行われる可能性があります。特に税関の取締強化月間の月は検査確率が高まりますので、納期に余裕を持っておくことが大切かと思います。
・税関検査は社会悪物品規制・関税徴収のために実施する
・税関検査は確定すると避けることができない
・税関検査料は通関業者に数千円~3万円程支払う
・税関検査は、2~5日程要する
・輸出入実績を積み上げれば即時許可(区分1)が出やすくなる
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