ホワイト国とは、端的に言えば、輸出貿易管理令の規制が緩和される国のことを指します。
輸出においては、核兵器に使われるような危険な物品の輸出が「輸出貿易管理令(外為法)」という法律で規制されています。
ホワイト国について詳しく解説する前に、輸出貿易管理令について簡単に触れておきましょう。
輸出貿易管理令は、以下2つの規制項目で構成されています。
■輸出貿易管理令
1.リスト規制:核兵器や武器に転用される恐れがある物品を定めている
2.キャッチオール規制:リスト規制以外の物全てを規制対象とする(食品と木材除く)
核兵器や武器に転用されるものは「リスト規制」で監視されているだけでなく、リスト規制で網羅できない規制範囲物品については「キャッチオール規制」で取りこぼさないように法律が構築されています。
また、輸出する物品だけでなく、物品の最終仕向地もチェックされます。
つまり、どこの国の、どこの企業に輸出するのかまで審査されているんですね。
日本においては、大量破壊兵器の開発をする可能性のある外国企業を「外国ユーザーリスト」として規定しています。
・経済産業省「外国ユーザーリスト」
https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180502001/20180502001-1.pdf
このリストに規定されている企業向けに絶対に輸出できない訳ではなく、輸出する物品が大量破壊兵器の製造に使われる可能性があると判断された場合に、経産省の許可を受ければ輸出することは可能です。
経産省から輸出許可を受けたあとに、税関の輸出許可を受けるという、二段階制になるわけですね。
少し長くなりましたが、輸出貿易管理令の基礎知識を理解して頂いたかと思いますので、早速ホワイト国について詳しく紐解いていきます。
目次
ホワイト国とは?
ホワイト国とは、日本を含む、核兵器や武器などに転用される可能性のある物品を厳しく規制している国のことを指します。
そのため、このホワイト国に入っている国への輸出については、日本側での輸出手続きは簡易的なものに緩和されているのです。
注意すべきは、迂回輸出は禁止されています。例えば、日本から韓国に輸出したあと、最終的に北朝鮮に輸送するというズルはできません。
※現在、韓国はホワイト国から除外されてます。
ホワイト国は全26カ国
現在、ホワイト国は26カ国規定されています。
※2019年8月28日に韓国はホワイト国から除外されました。
<ホワイト国一覧(輸出令別表第3)>
■ヨーロッパ
オーストリア・ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイルランド・イタリア・英国・ルクセンブルク・オランダ・ノルウェー・ポーランド・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・スイス
■オセアニア
オーストラリア・ニュージーランド
■北米
アメリカ・カナダ
■南米
アルゼンチン
参考:経済産業省:安全保障貿易の概要「輸出令別表第3の地域」参照
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo03.html
2019年8月、経済産業省は「ホワイト国」という名称を「グループA」に変更しました。グループB~Dも規定し、グループが下になるほど、手続きが複雑で審査も厳しくなります。ホワイト国から離脱した韓国は、グループBに降格しました。
ホワイト国は何が優遇されるの?
ホワイト国に加盟すると、2つのメリットがでてきます。
1.一般包括許可が受けられる
2.キャッチオール規制の対象外になる
詳しく見ていきましょう。
1.一般包括許可が受けられる
輸出貿易管理令における輸出許可には、包括許可という仕組みがあります。
同じ国に継続的に輸出する場合には、輸出する度に輸出許可を受ける必要がなく、一定期間、包括的に許可を受けることができるんですね。
この包括許可には種類があります⇣
簡単に言えば、ホワイト国として認められれば、ホワイト国間の輸出手続きが簡易的になるというわけです。
2019年8月に韓国はホワイト国から除外されましたが、つまりは、日本を含むホワイト国から韓国への輸出が面倒になったというわけです。
一般包括許可が利用できれば、該非判定責任者や統括責任者の登録書面を提出するだけで済みますが、他の包括許可を利用することとなれば、最大5つの法的書面を用意する必要があります。これを毎回用意するのは、非常に面倒で、国交を絶とうとしていると解釈されてもおかしくないですよね。
2.キャッチオール規制の対象外になる
冒頭部分で、輸出貿易管理令には「リスト規制」と「キャッチオール規制」があるとお伝えました。
大量破壊兵器に利用される危険な物品については「リスト規制」で規制していますが、その他の懸念物品は「キャッチオール規制」で規制されています。
ホワイト国に加盟していると、この「キャッチオール規制」の対象から外れるんですね。
つまり、税関に輸出申告したときに「ホワイト国への輸出だから、キャッチオール規制についての該非判定書は不要ですね!」となるわけです。
用意する書面が減りますし、荷主への負担も軽減されるため迅速な輸出ができるようになります。
輸出貿易管理令に違反して輸出したらどうなる?
輸出貿易管理令に違反して、経済産業大臣の輸出承認,許可を受けず輸出し、発覚した場合は、罰金、輸出停止など最悪の場合は逮捕されることがあります。
違反とその処罰の事例をご紹介します。
・冷凍タラを経産省の承認を受けずに北朝鮮に輸出
処分 :輸出禁止
対象貨物:全貨物
仕向地 :全地域
期間 :8ヶ月間
・炭素繊維を経産省の承認を受けずに韓国経由で中国へ輸出
処分 :輸出禁止・罰金総額200万円
対象貨物:全貨物
仕向地 :全地域
期間 :4ヶ月間
8ヶ月も輸出禁止された場合、中小企業は実質的に倒産せざる負えない状況にまで追い込まれるでしょう。過去には1,000万円以上の罰金や禁固刑を受けた事例もありますので、輸出する場合は、フォワーダーに相談の上、慎重に海外取引を行って下さい。
参考:安全保障貿易情報センター<外為法違反事例>
https://www.cistec.or.jp/export/ihanjirei/index.html
最後に
ホワイト国向けの輸出であれば、輸出貿易管理令上の手続きは非常に簡易的なものになりますので、輸出手続きはスムーズに進むでしょう。
リスト規制該当品やホワイト国以外の国へ輸出を検討されている場合は、税関へ輸出申告する前に経済産業省から輸出承認・許可を受ける必要がありますので、フォワーダーに相談し、手続きを進めて下さい。
・輸出貿易管理令は主にリスト規制とキャッチオール規制で構成される
・ホワイト国は、キャッチオール規制対象外となり輸出手続きも簡易的になる
・ホワイト国は現在26カ国。韓国は2019年8月に除外された
・輸出貿易管理令に違反すると輸出禁止や罰金などの処罰が用意されているため、慎重に輸出手続きを行うこと
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