今回の記事では、航空貨物輸送における保険について解説をします。
内容は、航空輸送を利用する場合、保険をかけるべきかについてです。
また、保険を付保する場合には、輸入者と輸出者のどちらが保険料を支払うべきか。
一般的に航空輸送は、海上輸送と異なり、事故や荷物の損傷の心配が少なく、保険をかけない場合も多いことについても解説をします。
これから、航空輸送をされる方は、保険付保の判断の参考としてください。
国際航空貨物の保険について
海外へ荷物を送る場合、日本国内の配送とは異なり、長い距離を運ぶことになります。
そのため、運送中に荷物が破損したり、事故やトラブルが起こることを想定し、一般的に保険をかけることを検討します。
保険をかける人は、予め当事者間で取り決めた貿易取引条件により決まります。
貿易取引条件はインコタームズ(Incoterms)と呼ばれ、国際商業会議所により標準的な条件が示されています。
下表は貿易取引条件と保険を付保する人の概略です。
貿易取引条件 | 解説 | 保険を付保する人 | ・売主は、船積み原価で販売する条件 ・FOBは、Free on boardの略 |
・売主は船積み原価+運賃で販売する条件 ・CFRは、Cost(船積み原価) and Freight(運賃)の略 |
・売主は、船積み原価+運賃+保険料で販売する条件 ・CIFとは、Cost(船積み原価) Insurance(保険料) Freight(運賃)の略 |
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CIF条件(信用状取引)の場合、買主の取引銀行から発行される信用状(L/C:Letter of Credit)に指定された保険を、売主が手配する必要があります。
ここでは割愛しますが、信用状取引とは、売主と買主の間に複数の銀行が介入し、売買当事者間の金銭受け渡しを円滑に行う仕組みのことを言います。
このように、通常は予め売買当事者間で取り決めた、貿易取引条件を参考に保険の付保をします。
航空貨物保険の必要性
先ほどご紹介した通り、保険は貿易取引条件に従い付保するのが通例です。
しかし、航空輸送に限って言えば、その多くが保険をかけず運送されていることが多い現状です。
荷主が保険をかけない理由として、下記のような要因が考えられます。
・他の輸送手段と比べ、運送中の振動および衝撃が小さく、損傷や破損が少ないこと
・輸送中に外部との接触がないため、盗難および紛失の可能性が少ないこと
・機内が密閉され気圧管理がされていることから、
温度や湿度の変化が小さく腐食などが少ないこと
航空機のこのような特徴は、海上輸送と比較するとより分かりやすく理解することができます。
・そのため、航海中に雨や風などの荒天に遭遇する可能性がある
・昼夜の寒暖差、気候などにより温度・湿度の変化にさらされる
・座礁、沈没、船火事、衝突といった船特有の事故が発生する可能性がある
・地政学的リスクが高いエリアでは海賊や盗難の危険がある
このように航空機は、海上輸送とくらべ輸送の速さやその信頼性から、荷主が保険をかける必要がないと判断することが多いようです。
実際に航空輸送にかかる保険料も比較的安価です。
しかしながら、航空機で輸送を行ったときでも、空港から買主の指定する納品場所までは陸上運送を伴います。
陸上輸送では、車両へ荷物を積み込む際や運送中の破損および事故が起こる可能性は決して低くありません。
航空輸送を利用する場合であっても、発送から買主の指定する納品場所までの全工程を考慮し、保険の付保を選択することをおすすめします。
また、頻繁に輸出入をするときは、全ての荷物に予め保険を付保することができる、包括予定契約を保険会社と結ぶという選択肢も視野に入れておく必要があります。
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