海外へ貨物を送るときの輸送手段には、大きく分けて航空輸送と海上輸送があります。どちらを利用するかは、貨物の物量、内容品、料金、所要日数を考慮して選びます。
航空輸送と海上輸送それぞれの特徴について解説します。
目次
航空輸送の特徴
航空貨物の最大の特徴は、輸送時間の短さです。日本からアジア各地やオセアニアへは10時間以内で、北米やヨーロッパへは最速で10数時間で到着します。
都市によっては直行便がなく、乗り継ぎ便を利用することもあります。乗り継ぎ便を使ったとしても、ほとんどの国の空港へ2~3日で到着させることができます。
航空輸送で運ばれる物
早く届けることができるという航空輸送の特徴から、次のような物品が航空輸送に適しています。
・鮮度が重視される貨物
生鮮食品(肉、魚介類、果物、野菜)、切り花等
・貿易関連の重要書類(クーリエサービスで輸送される)
B/L、原産地証明書
・短納期が求められる消費者向け製品
PC、スマートフォン等
・緊急を要する医療用品
医療機器、医薬品
・緊急を有するBtoB製品
自動車部品、各種電子部品等で緊急のもの等
・季節もの
クリスマス用品・ハロウィーン用品・季節ものの食品:アメリカンチェリー(5~6月)、松茸(7~12月)、ボージョレ・ヌーヴォー(11月)、チョコレート(1~2月)など。
・イベントもの
コンサートや舞台用の装置、機器、衣装等
・長期間の輸送に耐えられない生物
ペット、動物園の動物、水族館の魚等
メリット
・輸送時間の短さ
航空輸送の最大のメリットです。通常扱いでも世界各地へ1~3日程度で輸送することができます。
・優先扱いサービスが使える
航空貨物の通常扱いの場合、航空機の貨物スペースが混雑している場合、翌日の便に回されてしまうことがあります。
しかし、高めの運賃を払って優先扱いにすると、混雑時にも優先的にスペースが確保されるため、遅延が起こらなくなります。
・締め切り時間
海上貨物は、出港の前日や前々日までにコンテナ・ヤードへコンテナを搬入する必要があります。
一方航空貨物は、航空機の出発時間帯にもよりますが出発の2~3時間前が締め切りのことが多いです。そのため、緊急貨物で時間的に余裕がないときに有効活用することができます。
・温度変化が比較的少ない
航空機の貨物室の温度は、基本的には4~27℃程度の間で保たれています。保冷コンテナに入れなくても、概ねこの温度帯が保たれます。
海上貨物の場合、リーファーコンテナに入れなければ、熱い地域を通過する際に50℃以上に上昇することもあります。逆に寒い地域を通過すると氷点下になることもあります。そのような過酷な条件に比べると、航空輸送の温度変化は比較的緩やかです。
・代金回収が早い
貨物代金の支払い条件が貨物受け取り後支払いの場合、早く貨物が到着する方が、より早く代金を回収することができます。
・内陸部への輸送が得意
内陸部向けへの輸送の場合、最寄りの空港まで航空機で輸送すれば、空港から最終仕向け地への陸路輸送の期間や費用を海上輸送より抑えることができます。
デメリット
・重量当たりの運賃が高い
航空機は船舶に比べると搭載できる貨物の量が少なく、しかも燃料費が高いため運賃が高いです。
一機の航空機に積載できる貨物の重さは、数トン~130トン程度です。コンテナ船の場合、数万トンを一度に運ぶことができますのでかなりの差があります。
・保冷コンテナの費用が高い
海上貨物で冷蔵や冷凍で輸送したい時は、リーファーコンテナを使用します。航空貨物でも保冷機能のついたコンテナがあり、レンタルして使用することができます。
ただ、最も小さいサイズのコンテナ(内容量3.5M3)でもレンタル料が30万円程度とかなり高額です。30万円というのはレンタル料のみであり、これにさらに航空運賃が加算されます。
このような高額な運賃を掛けてでも保冷コンテナで輸送する貨物は、ほぼ医薬品に限られます。
医薬品の中でも特に厳密な温度管理が必要なものは、輸出国の出荷工場から輸入国の医薬品倉庫まで、Door to Doorで常に一定の温度を保つ必要があります。
そのような医薬品は高額なことが多く、1パレット(数百kg以内)で数千万円から数億円することが珍しくありません。
それほど高額だからこそ数十万円のコンテナのレンタル料が掛かっても、販売価格に十分反映することができます。
参考)航空貨物のサイズ制限を詳しく確認されたい方はコチラ
⇢ https://worldship-search.com/air-mail-size/
海上輸送の特徴
次に、海上輸送の特徴について解説します。海上輸送は、大量の貨物を一度に輸送できることが最大の特徴です。
メリット
・運賃が安い
海上輸送の最大のメリットは運賃の安さです。
日本から中国への輸送でLCL(コンテナ未満貨物)の場合、1立方メートル(または重さ1トン)あたり1万円~2万円程度です。
FCL(コンテナ単位貨物)の場合、コンテナ1本で5万円~10万円程度です。
20ft、40ftのコンテナには、目安として下記の物量を搭載することができます。一度に大量の輸送をするほど、1kgあたり(製品1つあたり)の運賃を低く抑えることができます。
20ftコンテナ:10~20パレット程度
40ftコンテナ:20~30パレット程度
デメリット
・時間がかかる
海上輸送の場合、航空輸送よりも大幅に時間が掛かります。中国までの場合5日程度ですが、通関や荷役の日数も考慮に入れると10日~2週間程度かかります。
十分な在庫があり、発注されてから納品までの納期に余裕があれば時間が掛かっても問題ありません。
逆に、品切れを起こして商機を逃してはならないような商品の場合、海上輸送は向いていないと言えます。
・内陸部への輸送が苦手
最終仕向け地が内陸部の場合、輸入国の港から長距離を陸路で輸送しなければなりません。その分の輸送日数や輸送費用を考慮に入れる必要があります。
航空・海上輸送どちらを利用すべき?
航空輸送と海上輸送の最大の差は所要時間です。貨物が出荷されてからいつまでに国内へ引き取りたいか、あるいは海外の納品先へ届けたいかを決めましょう。
日本から主要な輸出先への、航空輸送と海上輸送の所要日数の目安を表にまとめました。
海上輸送 日数目安 |
航空輸送 日数目安 |
|
---|---|---|
日本⇢香港 | 5日 | 1日 |
日本⇢ドイツ | 30日 | 1~2日 |
日本⇢アメリカ | 20~40日 | 1~2日 |
日本⇢ベトナム | 10~14日 | 1日 |
日本⇢韓国 | 3日 | 1日 |
ご注意いただきたい点があります。上記の表はあくまでも「港から港まで」、「空港から空港まで」の所要日数です。
輸出国と輸入国それぞれで必要となる税関手続きの日数や、荷役、集荷、配送に掛かる日数は含みません。
例えば日本から韓国へは航空機で2時間程度ですが、出荷した日と同日に貨物を韓国国内へ届けるのは通常の手配ではできません。
通常の手配では下記のようなスケジュールです。日本国内のある場所から出荷した日を「DAY0」とすると、韓国国内の納品先へ届くのは「DAY+4」が標準的です。
輸出空港到着日:DAY+1
輸出通関日:DAY+1
輸出空港出発日:DAY+2
輸入空港到着日:DAY+2
輸入通関日:DAY+3
輸入空港発送日:DAY+3
納品日:DAY+4
月曜日に出荷した場合、金曜日ごろに届くということです。ただしあくまで目安であり、フライト時間が朝か夜か、土日を挟むか否かといった条件によって日数が変わります。
また、チャータートラックで集荷や納品を行う、夜間緊急通関などの有料オプションサービスを使えば日数を短縮することも可能です。
海上輸送の場合も、輸出国と輸入国でそれぞれ税関手続き等の追加日数が掛かります。輸出国と輸入国でそれぞれ2~3日程度掛かるとお考え下さい。
ここで、重さ100kgの貨物を日本から香港へ輸送するときの輸送費のシュミレーションをします。
荷姿:カートン
寸法:30cm x 30cm x 30cm
箱数:10
重量:100kg (10kg x 10箱)
M3:0.27 (0.3 x 0.3 x 0.3 x 10箱)
航空輸送の場合
運賃:およそ20,000~30,000円
日数:1日(空港から空港)/5日程度(Door to Door)
航空輸送の運賃は、実重量と容積重量の大きい方を運賃適用重量(Chargeable Weight)とします。
容積重量は、6000cm3 (立法センチメートル)= 1kg と決まっています。
上記のカートンは1箱当たり 30 x 30x 30 =27,000cm2 =4.5kgです。
10箱で 4.5 x 10 = 45kg です。
「実重量 100kg」と「容積重量 45kg」を比べると実重量の方が大きいため、運賃適用重量は100kg です。
香港までの航空運賃は概ね200~300円/kg 程度ですので、航空運賃はおよそ20,000~30,000円です。
海上輸送の場合
運賃:およそ10,000~20,000円
日数:5日(港から港)/10日~2週間程度(Door to Door)
海上輸送の運賃適用重量は、1M3(1立方メートル)=1トン(1,000kg)です。ただし、LCLの最低重量は1M3(1トン)です。
上記の場合、実重量:100kg、容積重量:0.23M3ですが、最低重量が適用されて1M3の運賃が掛かります。
香港までの海上運賃(LCL)は概ね10,000~20,000円/M3 程度ですので、航空運賃はおよそ10,000~20,000円です。
上記の航空運賃と海上運賃ですが、月間あたりどのくらいの物量を輸送するかによって、見積り金額に大きな差が生じます。あくまで目安とお考え下さい。
100kgの貨物であれば、航空運賃:20,000~30,000円、海上運賃:10,000~20,000円程度です。意外と差が小さいと感じられないでしょうか?
この程度の差であれば、日数を優先して航空輸送が選択されることも珍しくありません。
航空運賃と海上運賃の差が小さくなる理由
上記の例で、航空運賃と海上運賃の差が意外と小さい理由を説明します。
ポイントは、海上運賃の最低重量が1M3(1,000kg)とされている点です。
一方、航空運賃の最低重量は45kg(270,000cm3=0.27M3)です。
上記の100kgの貨物の場合、海上貨物では1,000kgとみなされてしまうのに対し、航空貨物では100kgで計算されるため、比較的運賃の差が縮まります。
仮に、容積が1M3で重量が500kgの場合、下記のように航空運賃の方がかなり高くなります。
【航空輸送】
実重量:500kg
容積重量:166.66kg(1M3)
運賃適用重量:500kg
航空運賃:100,000~150,000円
【海上輸送】
実重量:500kg
容積重量:1M3
運賃適用重量:1M3(1,000kg)
航空運賃:10,000~20,000円
これだけの差があれば、料金を優先して海上輸送が選ばれるケースが増えるでしょう。
このように、一度に輸送する貨物の重さと容積によって、航空運賃と海上運賃の差額は大きく変わります。
LCLのときのCFSチャージ等を考慮すると、逆転して航空輸送の方が安くなることさえあります。常に海上輸送の方が安いというわけではありませんので、注意が必要です。
最適なプランで航空輸送をしたい方
一般的には、海上輸送よりも、航空輸送の方が費用は高くなります。
しかし、利用するフォワーダーや送る貨物内容によって、海上輸送よりも安くなるケースがあります。
弊社、株式会社みかん箱は、航空輸送を得意としており、各種航空会社や関連企業といくつもパイプを持っています。そのため、料金面や輸送プランで優遇されたご案内も可能です。
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